介護士こじらせ系

Bandcampとユマニチュードが気になる介護職の雑記です。

送迎だって認知症予防に効くかもしれない。

物の見え方というのは例え普段から見慣れているものであってもちょっと背伸びをしたり屈んだり、あるいは立ち位置、座る位置なんかを変えるだけでも随分と変わる事もあるもので、小売店のディスプレイを作る人なんかは棒立ちで眺めず、色々と動きながらディスプレイ全体を観察して最終的な配置などを変えていくものです。

 

以前にも通所介護の送迎について記事にした事がありますが、今日も送迎から。

 

通所介護の送迎は深入りすれば何より面白い業務である。 - 介護士こじらせ系

 

うちは小規模での運営で、送迎車は1台ないし2台で回しています。なので、ある程度方向が同じ利用者は必然的にほぼ毎日同じ車で、同じような時間に、同じようなルートで、更に言えば同じ席に座って家からデイサービスへ、デイサービスから家へと移動します。運転するスタッフも添乗するスタッフもほぼ同じ。そうなると、認知症だから、という但し書きを含めたとしても、会話も同じような内容になりマンネリに陥りがちです。もちろん、そうならないように工夫はしますが、話を聞いてもらえず、イニティアティブを取られるともうそこからは同じ話が繰り返されます。

 

 

ある時とある利用者がお休みされたので、支障が出ない範囲で座る位置を変え、ルートも変えて送迎を行ったんですが、その時の利用者の様子が非常に興味深いものでした。

 

 

最初の頃にはあったもののすぐに反応しなくなった街の看板に次々に食いつき、読み上げたり、職員に「あれは知ってるか?」と問いかけてみたり。いつもと違うルートであっても自宅までのルートは分かっているので運転手である僕にナビゲートしたり。この頃送迎時はある程度同じ話をしたらだんまりになりがちだった方が凄く生き生きし出しました。

 

 

以前散歩の効用についての記事を書きましたが、

 

認知症予防への散歩の効果から自分を戒めて。 - 介護士こじらせ系

 

送迎だって車の窓越しとはいえ、外からの刺激を受けるという点においては散歩まではいかなくともある程度同じ効果を得られるはずです。ただの送り迎えでない事は先に取り上げた記事でも書いた通りですが、ちょっとした変化を加える事によって利用者に普段とは違った刺激を受けてもらえるんだなーとこの件で感じました。

 

 

いつもの車、いつもの人、いつもの時間、いつもの席、いつものルート。安全面などを考慮すればそれが不確定要素の少ないという意味では一番ですが、可能な範囲の変化を加えるだけでも、いつも見ている景色が変化して目に映り、それが新たな刺激として受け止められるかもしれません。そしてそうした刺激は散歩と同様に、認知症の方に何かしらの効果をもたらすのかもしれません。そんな事を、送迎時の利用者の変化から思ったのでした。