介護士こじらせ系

Bandcampとユマニチュードが気になる介護職の雑記です。

介護報酬改定の具体的な数字が出てきた件

僕たちにとっては待ちに待ったものがついにきました!なんて書き方をすると何かプレゼントをワクワクしながら待っているかのようなポジティブさが感じられますがそんな事は決してなくて、介護報酬引き下げの具体的な数値の公表がなされました。

 

デイサービス、基本報酬大幅減 認知症加算は1日60単位 of 介護・地域包括ケアの情報サイト Joint

 

随分と大ナタを振るわれたなーというのが第一印象です。分かっていた事ではありますが。

 

僕はデイサービスの人間なので、通所介護の数値に目が行きますが、凄いものです。一応引用すると、

【例1】小規模型通所介護費の場合(7時間以上9時間未満)

要介護1 815単位/日 ⇒  要介護1 735単位/日

要介護2 958単位/日 ⇒  要介護2 868単位/日

要介護3 1108単位/日 ⇒ 要介護3 1006単位/日

要介護4 1257単位/日 ⇒ 要介護4 1144単位/日

要介護5 1405単位/日 ⇒ 要介護5 1281単位/日

【例2】通常規模型通所介護費の場合(7時間以上9時間未満)

要介護1 695単位/日 ⇒  要介護1 656単位/日

要介護2 817単位/日 ⇒  要介護2 775単位/日

要介護3 944単位/日 ⇒  要介護3 898単位/日

要介護4 1071単位/日 ⇒ 要介護4 1021単位/日

要介護5 1197単位/日 ⇒ 要介護5 1144単位/日

【例3】大規模型通所介護費(Ⅰ)の場合(7時間以上9時間未満)

要介護1 683単位/日 ⇒  要介護1 645単位/日

要介護2 803単位/日 ⇒  要介護2 762単位/日

要介護3 928単位/日 ⇒  要介護3 883単位/日

要介護4 1053単位/日 ⇒ 要介護4 1004単位/日

要介護5 1177単位/日 ⇒ 要介護5 1125単位/日

【例4】大規模型通所介護費(Ⅱ)の場合(7時間以上9時間未満)

要介護1 665単位/日 ⇒  要介護1 628単位/日

要介護2 782単位/日 ⇒  要介護2 742単位/日

要介護3 904単位/日 ⇒  要介護3 859単位/日

要介護4 1025単位/日 ⇒ 要介護4 977単位/日

要介護5 1146単位/日 ⇒ 要介護5 1095単位/日

 

とまあ、こんな具合です。通所介護なんて、在宅で介護する為にはある意味一番の味方になるだろうに…なんていう意見は今更どうにもならないので、これからどうなるのかをうちの施設で考えてみました。

 

うちの場合ですと、上記のカテゴリーの中では小規模型通所に当たります。一番の目の敵にされた部類ですね。ちなみにうちは1日の定員10名となっています。

 

 

一応匿名で行っているブログなので具体的な数字を出せず、結局信ぴょう性の薄い数字しか出せないのがダメなところではありますが、うちの施設の場合だと大雑把に概算で報酬額の比較をすると、介護報酬の引き下げによってだいたい1ヶ月辺り20〜30万の報酬減となりそうです。これは、あくまで一例ではありますが、20万の減少だとするとだいたい常勤職員一人とパート一人が雇えるくらいの数字になります。通所介護ならそんなもんです。

この数字だけで見れば、現状維持を考えるのであれば職員の削減やパートの勤務日数の減少、給与の削減を考えるのが自然です。

現場の人間に月辺り12000円の報酬増を掲げていますが、数字だけで見るのであればそもそもの人件費を削る事も考えるでしょう。あくまで仮定の数字ですが、常勤職員の給与削減、パート職員の勤務日数削減と、12000円がそのまま上乗せされる事のない状況が想像出来ます。

 

 

この時点で、要介護度の低い利用者を多く抱えた事業所は決して小さくない影響が起こるわけです。経費を削る目線ばかりを書いてきましたが、大抵の事業所はそんな決断を簡単にする事はないでしょうから、かえって不必要な競争まで起こしてしまうのではないでしょうか。以前取り上げた事がありますが、極端な話、利用者の確保の為にケアマネに袖の下を渡す事業者が出てくる可能性も否定出来ません。

利用者を挟まない、事業者間の生き残りの為の競争の激化はそもそもの高齢者を介護するという仕事からしたら不必要そのもので、確かに悪質な業者は淘汰されるべきではありますが、したたかな業者が生き残っていき、真面目であっても発信力の弱い業者が淘汰されてしまう可能性もありそうです。

 

 

 

さて、うちの施設の例に戻りますが、うちは要介護度の高い利用者が多い施設です。登録者は要介護5が一番の割合を占めています。そうした事業者の為に加算が新たに設けられています。認知症加算と中重度者ケア体制加算です。1日辺り60単位と45単位の加算になるようですが、当然要件があります。

認知症加算(新規) 60単位/日

算定要件等

・ 指定基準に規定する介護職員又は看護職員の員数に加え、介護職員又は看護職員を常勤換算方法で2以上確保していること。

・ 前年度又は算定日が属する月の前3月間の利用者の総数のうち、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の利用者の占める割合が100分の20以上であること。

・ 指定通所介護を行う時間帯を通じて、専ら当該指定通所介護の提供に当たる認知症介護指導者研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護実践者研修等を修了した者を1以上確保していること。

 

中重度者ケア体制加算(新規) 45単位/日

算定要件等

・ 指定基準に規定する介護職員又は看護職員の員数に加え、介護職員又は看護職員を常勤換算方法で2以上確保していること。

・ 前年度又は算定日が属する月の前3月間の利用者の総数のうち、要介護3以上の利用者の占める割合が100分の30以上であること。

・ 指定通所介護を行う時間帯を通じて、専ら当該指定通所介護の提供に当たる看護職員を1以上確保していること。

 

まず前者について。3つの要件のうち前の2つはそう高くはないハードルですが、3つ目が厄介そうです。

認知症介護指導者研修、認知症介護実践リーダー研修、認知症介護実践者研修の修了者を1以上確保、だそうですが、自分の施設にそうした研修を修了した人って、いますか?

認知症介護指導者研修については、平成23年度の段階で全国1600名だそうですが、

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service13/dl/kekka-gaiyou.pdf

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service13/dl/kekka-gaiyou.pdf

平成25年の統計でみる事業者数からすると相当に少ない数字であると言えます。また2ちゃんねるからなのであくまで参考程度ですが、

認知症介護実践者・実践リーダー研修について

 

こんなスレも。当然といえば当然ではありますが、受ければ修了証がもらえるわけではなく、また受講自体も応募者が多いようです。

 

そうした前提から、4月から変更すると言われて対応できる事業者がどれだけいる事か。実質的に、認知症加算を受けられる事業者はかなり限定されるでしょう。

 

 

後者について。まず一つ目、指定基準の規定にある人数プラス2(常勤換算方式)とあります。

小規模の場合の指定基準は、


デイサービスの人員基準 通所介護/介護ビジネス開業サポート

小規模デイサービスの場合(利用定員が10人以下)

1.管理者 1名(常勤) 
2.生活相談員 1名以上 
3.看護職員、又は、介護職員 1名以上 
4.機能訓練指導員 1名以上

とありますから、基本的に最低限でも4人必要となります。あくまで数字上ですが。そこに2を追加となると、分かりやすく言えば常勤職員2人追加、ですね。

先に述べたように、今回の引き下げで20〜30万ほどの報酬減である事を考えると、安易に常勤職員を増やすだけでは赤字をさらに増長させるだけにしかなりません。1日辺り45単位の追加ですから、仮に1ヶ月24営業日とすると、45×24=1080と、決して多いとは言えない数値が出てきます。

これがどういう数値かというと、

介護保険サービスにかかる全費用―介護報酬―単位とは - [介護]介護保険

介護保険では、介護保険サービスにかかる費用(=介護報酬)や支給限度額は全国一律で決められます。

しかし、地域によって物価や人件費が異なるため、介護報酬支給限度額は、「円」ではなく、「単位」という表示であらわされます。

通常、1単位あたりの単価は10円ですが、1単位をいくらにするかは、地域ごとに、またサービスの種類によって決められます。

したがって、住んでいる場所や利用したサービスにより、実際に支払う金額は変わってきます。

1単位10円基準ですから、だいたい月当たり10800円増える、と考えれば良いかと思います。

 

 

但し書きとして、

認知症加算については、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の利用者に対して加算として評価し、中重度者ケア体制加算については、事業所の利用者全員に対して加算として評価する。

とありますから、施設の規模によって報酬は変わるでしょうが、小規模であればそう大きな報酬増にはならないでしょう。

例えば10人定員で、利用者の平均値が5人だとすると、

認知症加算

(日常生活自立度が関わるので変動はありますが、例えば全員が対象だとすると)

60単位×5人×24日=7200単位

 

中重度者ケア体制加算

45単位×5人×24日=5400単位

 

となります。5人平均の施設で言えば、大雑把に12600単位、約12万6000円の報酬増になります。

 

ごちゃごちゃしていますがまとめると、

両者の加算をとった場合(小規模、利用者平均5人)

12万6000円の増

認知症加算の為の常勤職員増による人件費

14万×2程度?

で、加算をまともにとっても報酬の減額は避けられそうにありません。

 

 

勉強不足で申し訳ないばかりの数字ですが、こんな感じでしょうか。

 

 

 

とまあ、数字にフォーカスを当ててここまで見てきましたが、どこまでいっても利用者目線にたった数字は皆無なんですよね。

 

うちの施設の例ばかりになってしまいますが、介護度の重い利用者が多いと、最低でもマンツーマンくらいの人数がいないと施設としての介護は成り立ちません。例えば歩行の介助をするのに、利用者1人に2人、いや3人くらいまで介助しなければならない場面もあるでしょう。あくまで自立支援の観点に立てば、安易に車椅子に、なんて言えないんですよ、現場は。計画に歩行の筋力を維持したい、なんて書かれればなんとか支援したくなるじゃないですか。そこを出発点とすればマンツーマンでも足りないくらいなんですよ。

 

具体的な数字が出てきて、足りない頭を振り絞って数字を出してみましたが(おかしかったら是非とも指摘していただきたい限り)、感想としては介護は軽んじられているんだなあ、です。

 

 

TwitterのTLに、介護報酬に頼らない多角的な形を、といったコメントも見られました。それは違うでしょう。確かに経営出来てこそ初めて介護出来るというのはもっともですが、現場で働くスタッフと介護を受ける利用者の双方が満足出来る形を模索するのが最優先でしょう。現場で実直に働く人間が恩恵を受けられない限りは介護が良くなるのは困難です。まあ、綺麗事なのは分かってますけどね。

 

 

いずれにしても、小さくはない変化が起こる気がして仕方ないなーと今日は思うのでした。