介護士こじらせ系

Bandcampとユマニチュードが気になる介護職の雑記です。

「暗い」介護職の何が悪い

最近は外回りで外部のケアマネに会って直接話をさせてもらったり、それ以外でも電話連絡などでやりとりをする仕事が増えてきました。特に自分たちの施設の外部からの印象というのは日常の現場仕事だけでは分からない部分なので、ポジティブな事にしろネガティブな事にしろ一つ一つの意見はありがたいものです。簡単に直せるものばかりではないですが、参考にしなければ、といつも思います。

 

ただですね、たまに自分の中で引っかかる話も出てきたりします。今回はそんな中で言われた事について、です。

 

 

「暗い」という事を言われたのです。当然の事ながら、ネガティブな意味として。

 

 

 

今回の話の結論を先に言ってしまえば、「暗い」事の何が悪いのか、というところにつきます。

 

 

「暗い」の反対は当然「明るい」です。そしてそのイメージは大半の方が思い浮かべるように、「暗い」=ネガティブ、「明るい」=ポジティブ、になるのでしょう。

今回ケアマネから言われた以上、介護についてはこのイメージを当てはめて考えていきますが、介護に限らず様々な場面においてもこのイメージは概ね固定されたものとして捉えられるのではないでしょうか。恐ろしい事です。

タイミング良くこんな記事も書かれています。全てを否定するわけでは当然ないのですが、それにしても引用部分なんかは、なんだか滅入ってしまいます。

news.kaigonohonne.com

「若いかたが多く、スタッフ同士の連携もうまくされているので安心できます!! スタッフさんは、常に明るくて笑顔が耐えないので入居者さんも信頼しています」

「職員はみな一生懸命な若者が多かったように思います。明るくて利用者さんも一緒に笑っているところをよく見ました」

 

一生懸命なのは分かります。重要です。ですが、全ての人が明るく元気で、いつも笑顔でいなければならないんでしょうか。なぜそれが絶対的な価値観として君臨していなければならないのでしょうか。

明るく元気な人が全ての高齢者、利用者にとって最適な介護職員にあたるのでしょうか。暗い人に介護職員の適性はないのでしょうか。

明るい介護職が良い介護職としてスポットライトを当てられる事は正しいのでしょうか。

 

少なくとも僕は、そうした価値観を受け入れる事は出来ません。なんというか、気持ちが悪い。

一応言及しておくと、取り上げた記事に出てくる施設を非難したいわけではありません。ただそれを見る人が、明るいところが良い、と見ているところに違和感を覚えるわけです。

 

 

明るさ、元気さが売りな職員は、例えば体操をやったりレクをやったりすると多くの利用者を巻き込めたりします。そうやって、全体の雰囲気を盛り上げられる能力は素晴らしいと思います。

ですが一方で、当然の事ながらそうした雰囲気自体を受け付けない利用者だっています。自分たちに置き換えれば分かりやすいですが、その日の気分や体調によっては、元気さや明るさが鬱陶しく感じられる日だってあるはずです。

あるいは、その明るさに合わせて自分を押し殺してしまう利用者もいます。実際、個別に話すとそうした雰囲気に如何に気を遣わせているかが分かるので、それはそれでとても申し訳ない気分になってしまいます。

明るい事、元気な事、それを雰囲気として作り上げる事は、絶対的に良い事であるとは言い切れません。

 

暗いと思われる職員は、おそらく体操やレクで全体に訴えかけるような活動は不得手としているかもしれません。雰囲気作りも上手く出来ないかもしれません。それでも、一人一人と穏やかに腰を据えて会話が出来たり、丁寧に介助が出来ていたりすれば、それはその人の資質として十分アピール出来る点なのでは、と思います。むしろ、明るさに付いて行ききれない利用者からしたらより話しかけやすい職員として映るかもしれません。そしてそれは、十分な適性であるとも思います。

暗い、という事が絶対的に悪い点になるとは言い切れません。

 

 

職員全員がいつも明るく元気ではつらつとしている、なんて僕にはブラック企業にしか見えません。色んな性格の人がいる中で全員が噛み合って仕事をしている方がよっぽど健全に思えます。

そもそもからして介護という仕事自体、様々な高齢者がいる中で一人一人にどれだけ寄り添えるか、多様な利用者の性格や資質、症状などを受け入れられるかが重要なのに、受け入れる側が一つの価値観で良し悪しを判断されるなんて正常だとは思えません。

 

誰もがぱっと見で分かるような「明るい」、「暗い」で大方の印象を決めてしまうのは愚かな事です。そんな事だけで全ての仕事の質は決まりません。

 

 

こんなブラックな価値観からはいい加減抜け出したいものです。