介護士こじらせ系

Bandcampとユマニチュードが気になる介護職の雑記です。

女性障がい者の「性」について。

Twitterでもtweetしたんですが、ちょっと気になる2ちゃんまとめがあったのでそこから記事にしようと思います。


障がい者の女子と H する仕事してるけど質問ある??何でも答えるよ。|Hyper News 2ch

 

障がい者と性については僕なんかが書くよりよっぽどしっかり考察された記事を書かれた方がいるのでそれらをまずは紹介しておきます。


障害者の性について共有することは難しいのかな - 福祉の基本

 


『セックスボランティア』 障害者の性と生 - 「モスキートの独り言」

 


障がい者の性 - Medical Sex Worker - YouTube

 

流石はVICE、介助者だけでなく利用者への取材、そして何より実際の介助のシーンまで映像に収めてます。これは少し長いですが是非とも直視して欲しい。

 

 

今回冒頭で取り上げたまとめが興味深かったのは、障がい者女性に対して男性が介助をする、という視点でのまとめだったからです。福祉という業界の特性上、女性の就業者が多く、また性という側面から表に出やすいのが男性であるという事から女性から男性障がい者へ、という視点が大半です。その真逆、というのは輪をかけてデリケートなのが容易に推測出来ます。

 

というか、健常者女性に対して性産業、もっと言えば性自体が社会的に開けてきた事自体比較的最近の出来事でしょう。

分かりやすく言えば、例えばテレビにおける下ネタに対しての女性出演者のリアクションを想像してもらえれば良いと思います。昔のテレビで下ネタにまともに反応する女性はほぼ皆無に等しいですが、最近はもう少し素直に反応し、笑っているように感じます。

性産業にしても、女性向けAVや女性向け風俗が認知されてきたのはごく最近でしょう。いや、まだまだかな。

健常者ですらこうですから、障がい者女性が自身の性欲を問題とする事自体相当に困難な事でしょう。

 

また、障がい者の性に関心を向けると必ずと言っていいほど名前が挙がるホワイトハンズですが、女性の性についてはこのような見解を出しています。

ホワイトハンズに関する、よくある質問と回答(FAQ):取材編

Q:女性障害者に対するケアは行わないのですか?



A:当事者からのリクエストが無いため、実施していません。

 ホワイトハンズに寄せられる提案や批判の中で最も多いものが、「女性障害者向けのケアはやらないのですか?」というものです。

 しかし、「では、女性障害者には、どのようなケアが必要だと、あなたは考えるのですか?障害の種別ごとに、具体的に教えてください」
 と質問すると、誰も答えられません。

 つまり、ほとんどの人は、そもそも「女性障害者」にどのような人たちがいて、どのようなニーズや悩みを抱えているのかを全く知らずに
 「男性のケアをしているんだから、女性にもケアをすべき」という単純な発想で、批判しているにすぎません。

 ホワイトハンズでも、女性向けの性機能ケアサービスを開発するために、サービス開始以来、女性のケアモニターの募集を、継続的に行っています。
 しかし、女性障害者からの応募はほぼ皆無で、問い合わせ自体も、数えるほどしか来ていない、というのが現状です。

 女性の場合、「射精」という分かりやすい基準のある男性とは異なり、
 「何を、どこまで、どのように行えば、それはケアと言えるのか」という問題があります。

 それに加えて、当事者である女性障害者からのニーズやリクエストも全く出てこないので、ケアの基準を設定しにくいのです。

 「当事者の声が無い」ということは、声を出せないほど苦しみが大きい、と解釈することもできますが、
 反対に、当事者は特に苦しんでおらず、周りが勝手に騒いでいるだけ、と解釈することもできます。

 当事者でない人が、勝手に当事者の声を代弁してはいけません。
 女性障害者の性に関しては、妊娠や出産の支援、性暴力被害の防止の方が、優先順位の高い問題だと考えます。

※赤字はこちらで編集

 

赤字の引用部分がこの問題の全てを表しています。ケアの基準設定が非常に困難なんですよね、女性の場合は。概ね理解出来ます。

先に挙げた動画に出てくるケアラーが言うには、

・湧き上がってくる欲望の処理の仕方が分からない

・そもそもそれ自体が何なのか教えてもらう機会がない、理解出来ない

・性的に興奮している自分の状況の処理の仕方が分からなくてズボンを下ろして歩き回っていたりする

 

だそうです。ただそれでも男性ですから、処理方法のゴールとしての射精がある為、介助が成立します。その点女性は…となるわけです。

このケアラーの意見をもとに一点だけホワイトハンズの見解にツッコミを入れるのであれば、障がい者本人が問題の原因が何か自覚出来ないのに声を上げられるわけないよな、といったところでしょうか。その人が言わないから問題無い、というのが福祉の世界で通用するのかな、と少し思います。繰り返しになりますがこの見解に概ね同意なので、思いっきり反論したいとかそういうわけではないです。対応のしようがない、が本音な気がします。

 

 

女性障がい者の性について考える時に浮かび上がる問題としては、

・女性の性についての社会としてのタブー感

・ケアの基準を設ける難しさ

の二点があるわけです。もうこうなってくると大変複雑です。

健常者ですらようやく少しずつ開けてきた性について誰が問題として取り上げるのか。誰が問題を問題として吸い上げるのか。

仮に問題として取り上げられたとして、誰が基準を設けるのか。男性である僕には分からない。

万が一基準が作れたとして、誰が実際に基準までケアをするのか。基準が男性よりは理解出来る女性がケアするのか、いやいや、男性だって同性からはいやだから、やはり異性である男性がこの場合はケアに当たるべきだ、とか。

 

 

こうなってしまうが故に、

呼ばれているホストが所属するホストクラブでは、障害者は半額。クラブのオーナーは「出張ホストなんてほめられた商売じゃないけれど、少しでも社会の役に立てばという思いで障害者割引をはじめた」のだそうです。

『セックスボランティア』 障害者の性と生 - 「モスキートの独り言」

というように、言葉は悪いのですが末端が慈善事業として対処している状況になるのでしょう。

 

 

まあ、当然簡単に解決出来る問題じゃないですね。こんな軽く言う事では到底ないですが。

 

 

ただ一つだけ。

 

 

何事も、一度タブーと見なされると注目される事が非常に難しくなります。そして、タブーの中にいる人がタブーである事に自覚的であれば声を上げる事すら難しくなるので余計に。

健常者をマジョリティーだとすれば、福祉の業界はマイノリティーの抱える問題を、ちょうど玉ねぎの皮を剥くようにタブーを一枚一枚めくりながら顕在化させて向き合っていく業界だと思います。

マジョリティーの抱える問題は社会全体の問題として取り組まれますが、マイノリティーの抱える問題は誰かが向き合わない限り社会からは振り向かれもしません。目の前の人が声を上げられないのであれば、寄り添って代弁するのが福祉に関わる人間の一つの役目なのかもしれません。

 

最後に、今回の性の問題の複雑さをより表す一文を冒頭のまとめから。

97: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/10/05(日) 11:52:07.08 ID:9JqEvA0uO.net
俺ゲイだからゲイとかビアンの障害者ってどうするんだろうすげぇ気になる

 

まだ剥くべき皮はたくさんありそうです。