介護士こじらせ系

Bandcampとユマニチュードが気になる介護職の雑記です。

クロ現「ポエム化」特集から1年、介護甲子園について考えてみた。

一応、介護の話です。ちょっと長い前段があるのでてっとり早く読んでいただけるなら太字まですっ飛ばしていただいて大丈夫です。

 

僕が本当に大好きなミュージシャンの一人に前野健太がいます。歌詞を読んだ瞬間に「間違いなく自分の好みだ!」と確信出来て、実際聴いてみたらその通りだった、というのがきっかけでそれ以来ライブにも何度も行くくらいに好きです。弾丸ツアーで某地方に遠征した事もあります。伝えたい事を聴き手に届ける為には直接的に卑猥な言葉を使う事も辞さない彼の歌詞からは、目を背けたくなるような現実の辛さだったり、若さくるもどかしさだったり、心細さだったりがストレートに飛び込んできます。言葉に妙なオブラートがないんですよね。リアルがむき出しというか。それが一番の魅力です。


2012.12.14 前野健太 「あんな夏」 - YouTube

 

それまで僕、歌詞を読んで特定のミュージシャンを好きになるって事がなかったんですよ。好きな曲を友達と行くカラオケで歌ったらビックリするくらい気恥ずかしい歌だった、なんて事が何度あった事か。言葉で好きになったのは彼が初めてです。

 

 

こういう歌が好きになってからは特にですが、友人とのカラオケなんかで中学時代とかの懐かしい曲とかを歌われて改めて歌詞を見ると、さっぱり伝わらないなーなんて感じる事が多くて。ワイワイ騒げれば良いので気にはしませんが、今聴くとちょっときついなーなんて思う事があるわけです。いかにも良い事歌ってますよ、的な曲とかの事です。ポエムみたいなやつですね。

どのタイミングからか覚えていませんが、歌詞がポエミーな曲が凄く増えてきて、真面目に歌詞を追いかけるとちょっと聴いていられないなーって事が増えました。夢、希望、仲間、みたいなキーワードが凄く苦手で歯が浮きそうになります。体が受け付けない。でも、結構そういう曲が好きな人って周りにもいて、良い歳してそれはないだろーとか思わさせれる事が多々有ります。

 

そんな僕なので、少し偏った見方くらいに読んでもらって大丈夫だと思うんですが、そう、今日は介護甲子園やらポエムっぽい美辞麗句についてです。

 

 

 

NHK居酒屋甲子園についてクロ現で取り上げてからちょうど一年くらいだそうで、放送時からその辺に関連した記事も結構書かれていたようです。


ポエム化 - NHK「クローズアップ現代」で特集され話題に。

 


日本「ポエム化」現象のナゾ | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

こんな特集記事まで書かれています。

 

 

そんなわけで介護甲子園です。僕は最初に存在を知った時、介護技術を競い合う大会なのかな、と勝手に思ってました。それでも大げさに利用者に声かけしたりするのはちょっと気持ち悪いなーと更に勝手な嫌悪感を感じてそれ以上の関心はもっていませんでした。それが何かのタイミングで大会のダイジェスト動画なんか見た日にはもう絶句でした。僕にポエミーなものへの拒否反応があるからでしょうが、見るのもきつかった。


第三回介護甲子園 ダイジェストムービー - YouTube

 

 

一つ先に言わなければならないのは、この動画を見ている限り、参加している施設に妙な印象をもつことはなかった、という事です。少なくともトイレにまでポエムを掲示しちゃう居酒屋なんかよりは、ずっと良い。

多分ここに登場する施設を利用している人が嫌な思いをするような事は絶対ないし、どこかの施設の方が「パートも正社員も関係ない」と言って責任を果たしているのはその施設のマネジメントや制度が整っているからだろうと思う。ここだけは強調したいところです。

公式のブログなんかを併せて読むとより良いと思うんですが、実際は施設のコンセプトを大々的に変更した、とか、そういった具体的な内容もプレゼンしているようで、それは凄い事だと素直に思います。

 

じゃ、何が悪いって、少なくともこの動画を見て介護をやろう、という人が増えるかって言ったら、絶対いないと思うんですよ。

 

 

 

 

介護業界に人がなかなか集まらないのって、仕事内容に対しての待遇の悪さが一番の原因に上がるはずです。もちろんそれが簡単に改善されるかといったら、そうではありません。だから僕みたいな小物でもしつこくしつこくこうして発信するわけです。

そういう現実的な問題を覆い隠してしまうのって結果的に新しい人は呼べないと思うし、例え入ってきたとしてもギャップが大きすぎて続かないんじゃないかなとも思います。

 

 

 

僕は、こうしたイベントを行う団体が「日本介護協会」と名乗っている事自体に違和感を覚えます。介護を代表するかのような団体名を名乗るのであれば、ポエムで逃げるのではなく、もっとやるべき事があるのではないかと。

一つの解釈として、ポエム化してしまうのは逃げです。介護甲子園の場合は結果として主催団体が編集して逃げてしまうから始末が悪い。

 

 

残念ながら介護の業界には妙な業界団体が多く、増えているが故に一枚岩となって共通であるはずの大きな問題を訴える事なく、それぞれが活動しているような印象が強いです。例え違っていたとしても、結果的にまとまって行動している形跡は見られません。

本当に介護の業界を良くしたいと考えているのであれば、少なくとも業界内ではまとまらなければ到底財務省の財布は緩められないでしょう。介護甲子園の動画は、施設がいくら頑張っていても結果的にポエム的な解釈しかされていない事の虚しさを感じます。

 

 

 

業界にいる人がみんな、人材を欲しているのであればなおのこと、こうした業界団体はまとまって意見表明出来なければ何も変わりません。

こうした厳しい状況であれば、短絡的、安易な結論を出すのではなく、例え目を背けたくなるくらいに厳しいものであっても現状をしっかり訴えられるものでなければ、結果として何も解決しないように思います。

 

 

 

2025年の問題、如何にも大問題のように思えて、誰も何も出来ていないのが結果なのではないでしょうか。それであればここで、短絡的にならず介護の抱える膿を出来る限り出し切るのも一つの手段なのかな、とも思っています。

 

冒頭で取り上げた前野健太の歌詞のように、聴くのが辛くなるくらいに現実をさらけ出すタイミングは今なんじゃないか、と思うのです。ポエムなんかに逃げないで、です。