介護士こじらせ系

Bandcampとユマニチュードが気になる介護職の雑記です。

身体拘束をあえて肯定的に考えてみる

認知症の高齢者に暴力的な行為を振るわれた事はありますか?僕は最近だと、食事の際近づいただけで箸で目を突かれかけました。メガネをしていたので大丈夫でしたが、不意打ちでしたし、人によっては最悪失明だって十分考えられたケースだと思います。何が恐ろしいって、おそらく目だという事を認識して突いてきますからね。本当に怖かった。

Twitterなんかで見ていると、僕の経験なんかより遥かに怖い思いを、あるいは実際に怪我をするケースがあったりするわけで、認知症の方の暴力行為について触れるたびに自分の身をどう守るべきかよく考えさせられます。

 

(こうした時に、介護者や施設がその高齢者やその家族を訴えるパターンってあるんですかね?聞いた事はないんですが、やはり泣き寝入りせざるを得ないんでしょうか。)

 

当然、後からそのシーンを振り返るとどこかにささやかなきっかけがある場合もあるわけで、次はこうするべきだな、と考えられるわけなんですが、認知症の症状は本当に千差万別で、時には次からはこうしようなんて考えるまでもなく、初めてのパターンでいきなり介助者が負傷してしまうケースもありえるわけです。

 

 

ここ数日身体拘束についてボヤッと考える事があったのですが、そんな時にこんなニュースが。

拘束介護の医療法人に改善勧告 東京都 NHKニュース

安易に綺麗事だけで終わってしまっては解決しないと思うので、今回はあえて身体拘束を、そしてこの施設を肯定的に見る事で考えていこうと思います。

 

そもそもなぜ身体拘束をするのか、という疑問があります。

 

 

最も多くの人が想像する理由としては、その高齢者が暴れる、という事が挙げられるのではないでしょうか。

 

暴れる為に治療が出来ない。

暴れる為に介助が出来ない。

暴れる為に点滴などの管が外れてしまう。

暴れる為に結果的に本人が打撲などの怪我をしてしまう。

暴れる為に介助者が危険に晒される。

 

ざっとこんな感じでしょうか。

 

おそらく多くの施設では、身体拘束に対しての施設の方針などが定められているかと思われます。大抵文言には、一部の場合を除いて、といった除外事項があるようですが、上記はどの程度その除外事項に当てはまるのでしょうね。

 

 

身体拘束について写真付きで解説されているサイトがあります。


身体拘束とは - 特定非営利活動法人 全国抑制廃止研究会

 

写真付きの拘束事例が8つありますので、あえて拘束を肯定してみていくと、

1.点滴のチューブなどを抜く事で治療や栄養供給の妨げにならないようにしている。

2.ミトンを付ける事で体を掻きむしって皮膚を傷つけたり、おむつをずらしたりしないようにしている。

3.ベルトで拘束する事は、本人が転倒して怪我をしないようにする。

4.柵で完全に囲うのは3の理由と同様。

5.1と同様。

6.車椅子に固定する事で、車椅子からの立ち上がりによる転倒などの事故を防ぐ

7.6と同様。

8.部屋への閉じ込めは粗暴性などで他の高齢者に危害が及ばないようにする

(数字は引用サイト内の写真の番号に準ずる)

 

文字に起こしてみると実にささやかな感じに写りますが、結構どれも厄介な問題なんですよね。

 

 

どれにも言える事なのですが、介護の仕事に無理解な人ほど、こうした場合に想定される事故が発生した際に介護者の怠慢だと決めつけてしまうように感じます。なぜちゃんとうちの家族を見ていられないんだ、ってね。

身体拘束には、その一つの理由として介護者のギリギリの自衛手段になるという側面があります。普段は分からないようにして、怪我などなく穏便に…なんて考える人もいるかもしれません。大変ダメな言い方をすれば、バレなきゃ大丈夫だしね、ってところです。

 

だいぶ言葉が悪かったですが、冒頭の僕の実例でもそうですが、場合によってはやらなきゃやられる、っていうギリギリの線が存在しています。当たり前ですが、危険性のない人に拘束なんて考えもしませんよ。危険性があるからそれを考えるわけです。その危険性というのは、高齢者自身への危害だけでなく、時には付き添う介助者に向かうものも含まれます。

 

怪我されるのが怖いから

適切に治療出来ていないじゃないかと指摘される、つまりレベルの低さを指摘されてしまう可能性があるから

他の高齢者に危害が及ぶ可能性があるから

介護者に危害が及ぶ可能性があるから

 

繰り返しになりますが、こんなところから身体拘束という選択肢が生まれるのだと思います。

 

 

身体拘束の摘発というのは、そうしたギリギリの自衛手段すら奪われる事を意味します。なので、こうした事態が発生する場合には、もっと深く検証されるだけでなく、その検証結果も同じように情報として出されるべきなのですが、多分この件も関係者くらいまでしか追いかけないでしょうね。世間的には、悪質な業者がまた出てきた、これだから介護は、で終わるんじゃないかと思います。何が嫌って、この件について都知事の発言が、

また、北区がこうした行為の一部が「虐待に当たる」と認めたのを受け、都は今後さらに調査を進めることにしています。
舛添知事は17日の定例会見で、行政の監視が行き届かない高齢者向けのマンションで虐待に当たる行為が行われていたことについて、「法律の裏をかくような形でやっているので悪質で、全体で網をかけるような法整備が必要だ」と述べました。

 

とにかく炙り出せ、になっている事ですよね。膿を出し切れば良くなるってもんじゃない。思考停止そのものです。こんな無理解のまま介護にテコ入れされたらどうなる事か。

例えば相当に力のある、暴れる高齢者がいたとして、その高齢者を預かっていた施設が摘発によってサービス停止されて他の施設に転所したとして、その高齢者の粗暴性がなくなるかといったら必ずしもそういうわけではないですよね。最悪、どうしようもなくて新たに身体拘束をしてしまう施設を増やしてしまう可能性だってあります。

 

 

高齢者だって当然そうなりたくて粗暴になるわけじゃないです。それは当然でしょう。普通の介護職ならそこにどれだけ寄り添えるか考えるもんです。ですが、率先してそうした介護が出来る人がその粗暴性によって負傷してしまったりすればその行為自体意味がなくなってしまうんですよね。介護職だって人間ですから。

 

 

前にも書いたような気がしますが、改めて、身体拘束を本質的になくしていきたいのなら介護職をどう守るか、を全力で考えていくべきだと思います。自分たちが守られる線があればこそ、より高齢者に寄り添う事に注力出来るはずですから。