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介護士こじらせ系

Bandcampとユマニチュードが気になる介護職の雑記です。

介護のミスで訴えられるなんてたまったもんじゃない

僕は幸運な事に、自分のミスで、あるいは所属する施設の誰かのミスによって利用者が亡くなるという経験はありません。正直に言えば、その日立位が不安定になって支えたけど崩れるように転倒させてしまった、とかはあります。大きな怪我はありませんでしたが、あれは慌てましたね。

どんな仕事でもミスは付き物で、介護も例外ではないでしょう。これまで失敗なく仕事をしてきた人はいないと思うんですが、皆さんはどうですか?

 

 

以前も書いたのですが、介護に関しては十分に教育されないままにいきなり人の生き死にに関わる仕事をするわけで、その点からすれば明らかにリスクが高いです。何より、従事者を守る制度があまりにも希薄である事がリスクをより高めてしまっています。

 

介護の規制緩和は現場の介護職が丸裸で炎に飛び込むようなもの - 介護士こじらせ系

 

どんな介助をするにも常に相応以上のリスクが付きまとうのが介護です。その事に自覚的にならなければならない一方で、リスクを意識し過ぎると何も出来なくなってしまうという側面がありますから、より良い介護(というものがあるとすれば)にする為には直接利用者に関わる現場職員をどう守るかが施設だけでなく、業界に関わる人には重要な鍵になるはずです。

 

では、この事例ではどうでしょう。


介護施設での誤嚥窒息に対し損害賠償を求める遺族 - Togetterまとめ

 

誤嚥による窒息で利用者が亡くなった事に対し、その遺族が損害賠償を求めている事に対してのTwitterでの反応のまとめです。

Tweetの中でも見られますが、誤嚥は自分の体液からでも起こり得る為、そうした考慮なしにここまで追求されてしまうと介助に対して萎縮してしまったり、あるいは施設も受け入れに積極的になれなくなる可能性があるわけです。

 

こうした事例で裁判を起こされては、というのがまとめられている反応の傾向ですが、過去にないのか、といったらそんな事は全くなくて、探せば簡単に出てきます。

 

https://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/34724/8/Honbun-5084_05.pdf

https://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/34724/8/Honbun-5084_05.pdf

「介護事故裁判例の概括的検討」

 

http://www.ls.kagoshima-u.ac.jp/ronshu/ronshu2/bessatsu01/ronbun/A03890813-01-000000025.pdf

http://www.ls.kagoshima-u.ac.jp/ronshu/ronshu2/bessatsu01/ronbun/A03890813-01-000000025.pdf

「介護を巡る事故・紛争事例と利用者の権利擁護・権利救済」

 

http://jssm.umin.jp/report/no30-2/30-2-04.pdf

http://jssm.umin.jp/report/no30-2/30-2-04.pdf

「介護裁判からみるケアと医療のつながり」

 

前者二つは少し古い資料ですが、逆に言えば介護保険制度が始まった比較的早い段階からこうした裁判は行われている、という事でもあります。

誤嚥についても判例があり、訴えが棄却されるものも逆に認められるものもあります。それらについては上記のpdfを読むのが一番だと思いますので、ここでは省略します。

 

 

少なくとも言えるのは、判例があり、蓄積がありながらも制度としては変化があまり見られないという事でしょうか。ただこれについては、介護についてはこれが正解、というものが存在しない為制度として一律に方法論を定める事が出来ないという側面があるからでしょう。むしろ身体拘束に代表されるように、利用者本人の権利を尊重するように、というごく当たり前の考えが当たり前になってきたからこそ、介助を避け、自立を促す方向性が強まり、それが結果的に介護従事者や施設運営者にとってのリスクを高める結果になってしまっているという点があります。

 

胃瘻なんかもその一つですね。高齢者が食事を楽しむ、というごく当たり前の考え方からすれば胃瘻は出来る限り避けられるべきなのですが、食事に関して言えばその結果として誤嚥のリスクを高めてしまっています。

 

 


介護事故 裁判になる前に話し合いで解決しようという取り組みが動き出している : 介護事故 福祉・介護・医療

 

こんな記事があります。裁判になる前に、第三者を挟んで解決しよう、という考え方ですね。「ADR裁判外紛争解決手続き)」と呼ばれるそうです。ここにもあるように、事故が起きてからの当事者同士の話し合いで冷静になれるとは思えないので、第三者が両者の妥協点を見極めるのは重要です。

 

 

とまあ、随分堅く書いてきましたが、一つの結論として、これはどんな職業にも言える事ですが、やはりミスが起きたら初動が極めて重要になります。利用者に対しての対処はもちろんですが、家族に対してどう対応するのかがその後の展開も考えると重要です。判例を読むと、誤嚥については起きてからの行動次第で訴えが棄却される場合もあるようです。異変の素早い情報共有は必須です。

おそらくどんな施設でも緊急対応についてはマニュアルが存在しているはずなので、マニュアル通りの行動が自然と連携して出来るくらいになるのがベストです。

 

この辺は何を今更、的な話ではありますが、こういった裁判の事例なんかを見るとどれだけの施設が徹底出来ているのか考えさせられますね。

 

 

何より一番は今の段階では結局のところ、普段の家族との接遇をいかにうまく行い、信頼関係を築けるかというところに尽きるでしょう。コミュニケーションはもちろんの事、ちょっとしたトラブルや事故なんかに関しての対応で実績を積み上げていくのがいざという時に自分の身を守る為の担保になります。個人単位ではミスに注意しつつ、こうした対応を心がけるのがまずやるべき事でしょう。

 

 

介護従事者だけにとどまらず、介護に関する考え方や年を重ねることによる体の変化をもっと一般的な知識として世間が認知するようにするのも一つでしょう。介護サービスを利用する段階になって初めて、誤嚥は誰にでもあり得るからそれで事故が起きても勘弁して、なんて言われたら納得はいかないですからね。

今は、平均寿命も上がってきているし、例えば同じ60歳でも昔に比べて元気な方が多いのだろうと思うので、だからこそ意識されにくい加齢に伴うリスクを認知してもらわなければならないんだと思います。元気だから若い時と同じように、なんて勘弁ですよ。

 

 

介護従事者はより事故へのリスクに敏感に、介護に関わらない人はより加齢に伴うリスクに敏感に。でなければいつまでも誰が悪い、誰のミスから、なんていうレベルの低い争いから逃れられないと思います。