介護士こじらせ系

Bandcampとユマニチュードが気になる介護職の雑記です。

福祉関係者へ美術館に行く事のススメ

日曜日は予定がない、仕事くらいしかしていない、な何とも寂しい休日を過ごしていたわけですが、唯一休日らしい休日を過ごしたと言えるものは、近所の美術館に行った事でした。たまたま入場無料だったんですよね。これ幸いと向かいました。

 

 

まあはっきり言いまして、僕は芸術ってのがさっぱり分かりません。学生時代の美術史なんて授業はほぼ睡眠で、レポートだけで乗り切れた授業だったからほとんど聞いていなかったし、音楽だって聴く専門で演奏はさっぱり、はたまた書道とかは習字を小学生の時に習っていた程度。理屈っぽい性格の僕は自分の感性の部分ほど頼りにならないものはないよな、ってな具合でいつも思っているんですよね。

でも、美術館だとかアート作品を何となく眺めているのは凄く好きなんです。僕はどうしても見えている景色を理屈っぽく捉えてしまうので、自分の観る事の出来ない景色を絵画として形にしてくれる芸術が面白くてしょうがないんです。

 

僕が芸術作品を鑑賞する時は、まずパッと見て第一印象としてどう感じるかと、何を描いているのかを想像する事を大事にします。どうせ作者やタイトルを見ても分からないのだし、それなら出来るだけ自分を空っぽにして純粋にどう思うか、というのを自分自身に試すわけです。

それからタイトルを見て、それが目の前の作品と結びつくならほーっと感心し、結びつかなければまた更に作品と向き合って頭を捻るわけです。

 

 

 

ピカソだとかゴッホだとか、僕でも知ってるくらいの有名な芸術家でもない限りは大抵分からない、知らないんで、上手い下手はもちろん比較のしようがないし、余計な知識との紐付けもほとんど起こらないので、純粋に自分が好きか嫌いか、くらいしか言いようがないんです。それにしたって、色の感じが〜とか、雰囲気が〜とか、タッチが〜とか、物凄くボヤッとした理由しか出てきません。

その時の展示が現代美術だったのでなおのことです。写実的なものなら多少は分かりますが、だいたいは意味不明というか、下手したら小学生でも作れるんじゃね、とか、かなり低レベルな感想が思い浮かぶ事がほとんどで、もっともらしい御託や意見は頭を掠りもしません。うわーとかへーとかほーとかはーとかあーとかふーんって。

 

 

でもそれが良いんだよなって、見ていてふっと思ったんです。介護ってか福祉全般にとって良いな、と。

 

 

 

芸術って比べようがないじゃないですか。評論家やら知識人やらマニアが予備知識のフィルターを貼った色眼鏡で見ることで初めて上手い下手、あるいは順位ってものが出来てくる。知らなきゃ色眼鏡の掛けようがない分、単に好きか嫌いかしかないんですよ。

 

 

 

高齢者や障がい者と接する時もそうじゃないとな、と思うんです。特に現場で直接関わるスタッフにとっては。

 

 

 

事前に担当者会議などでトップが情報を共有して、その利用者の特徴や注意点をあらかじめスタッフに周知する事でサービスを平準化するのが常ですが、そんな機械的な理屈っぽいサービスは正しいんでしょうか?

予備知識は重要ですが、その予備知識が平準化されたサービス以上の、人と人との関わりというもっと根本的な部分への妨げになるような気がします。

病気だとかそれに関わる服薬だとか、あるいはアレルギーなんかでのタブーはともかくとして、これが好きだからやってあげた方が良いとか、あれは嫌いだから止めた方が良いという情報はマニュアル通りの接客以上にはなりえません。好きだからそればかりになるのも、嫌いだからいつまでもそこに触れないなんてのは誰だって出来る仕事ですよ。そうやって好きとか嫌いだっていう輪の中に閉じ込めるのは精神的な拘束じゃないですか?

 

変に事前情報に縛られるのであれば、いっそ予備知識なしで0から利用者とコミュニケーションをとってその人を理解する方がよっぽど人間相手のサービスに相応しいのではないでしょうか。

 

 

予備知識なしで芸術鑑賞をするっていうのは、作品との対話であり、またそれに対峙する自分自身との対話でもあります。分からない、という事が限りなくフラットな気持ちで目の前の作品と対峙させてくれます。

福祉に関わる人には是非とも美術館なんかに行って、何も考えずまず一度芸術鑑賞をして欲しいものです。純粋な気持ちで対峙する、という体験は、目の前の利用者との本来的な向き合い方を0から再現してくれるはずです。

 

大抵映画館に行くより安いですから、大した出費にもならないしオススメですよ。