介護も即戦力を期待する教育ばかりではいけない

今日職場であった、ささやかなトラブル未満の出来事から。

隣接する関連施設との連携がいまいち上手くいかず、うちの方の職場に少しシコリが残る形になる出来事がありました。まあそこに至るまでには少しばかし色々とあったのですが、最終的には相手の職員がマナーというか、ごく一般的な礼儀の面で「それってどうよ」というような対応だった事が原因でした。その職員からしてもある意味とばっちりではあるんですが、結果的にはその職員の印象ばかりがうちの職場で悪くなってしまいました。同じ法人内とはいえ、もう少し上手くやる方がいいんじゃねーの？というのが僕の率直な感想でした。

そこで思ったんですが、介護施設に就職した場合に、最初の研修で現場での仕事についての指導以外の教育、例えばごく基本的な社会人としてのマナーだとかって、一体どれくらいの施設、法人が教育出来ているんでしょうか？

一般企業に新卒社員が入ってくる場合、ある一定期間は研修期間という事で現場での知識より先に、社会人としてのイロハを指導する事がほとんどだと思います。それは、社内に教育担当がいる企業もあれば、中小企業のように、一部を外部講師に委託して実施する事もあるでしょう。いずれにしても、一人の会社員として、という以前に一社会人としての教育を施すのが一般的でしょう。社会人としての基礎をベースとして、その上にそれぞれの職種の専門性を上乗せしていくイメージでしょうか。

話を介護に戻すと、今の介護業界全体の傾向ですが、基本的に人手が足りません。だから、新しく職員が増えた場合、即OJTで現場に出るというパターンが多いのではないでしょうか。あるいはあったとしてもその施設における介護技術だとか考え方だとかの指導でしょうか。

それって凄く悪い傾向だと思います。

ある程度社会人としてのベースがある人は良いとして、冒頭に挙げた今日の出来事の例のように、ベースが少し危うい、と感じさせてしまう人って、その法人がよほど問題視したり、あるいは教育に力を入れたりしない限りは改善されるタイミングがほとんどないと思うんですよ。

僕の例だと少し曖昧かもしれませんが、もっと分かりやすい例であれば、外部からの電話応対だとか、利用者家族などの来客に対しての接遇マナーとかですね。教育を受ける機会がなければ向上のしようがありません。失敗し、問題になってからでは遅いのです。

まして、人手の足りない介護業界ですから、一般企業とは違って売り手市場なわけです。変な話、嫌だと思ったら辞めても次が見つけやすい。だから、本人が自覚しない限り、上司が、先輩が説教ばかりでうるさいとでも感じたら割と簡単に辞める選択肢を取りやすいです。

この傾向が進んでしまうと、

辞められては困るからなかなか指導出来ない、しにくい

↓

職員が育たない

↓

サービスの質が上がらない

↓

ありえないようなトラブルが起きる、そこから連鎖的に不必要なトラブルが付随する

↓

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という負のスパイラルに陥るわけです。もっと言うと、指導されないというところから職員が成長しないどころか図に乗る可能性もあるわけです。出来ていると勘違いするとか。

人が足りない、というのは、単に働き手としての頭数が足りないという問題だけでなく、一人一人の質を上げる事が難しくするという側面も持ち合わせるわけです。これは働く側にも雇う側にもメリットがありません。

もともと介護の世界で、新卒で職員を採用するという傾向が非常に薄いからこそ社会人としてのごく基本的なスキルに対しての教育が軽んじられてきたのだと思います。

これからの時代、終身雇用なんてもはや幻想に近いものになるわけで、一生同じ職場で働ける、という保障はどこにもないわけです。新卒で介護の世界に入った人が介護を離れて他の仕事に就く事だって考えられなくはないです。ただそうなった時に、社会人としての一般常識みたいなものが皆無な人しか排出出来ないようでは本人はもちろんのこと、介護という職種自体も同じように嘲笑の対象になってしまうわけです。「ああ、やっぱり介護だもんね」って。あるいは、「ここに勤めていた人は社会人としてダメだ」なんて見られて、結果的に施設自体の信用問題に繋がる事もありえます。

介護は人手が足りない業界です。新しい職員には一刻も早く戦力になって欲しいと考えるのは当然でしょう。介護技術などの教育に偏重するのは分かります。ですが、そう考えるからこそもっと基礎的な教育にも同じくらい力を注ぐべきですし、ひいてはそれが結果的に介護職全般の見方を変える為に必要になってくると思うのです。

介護は職歴にならない、なんて言われるのはもう止めよう。