介護士こじらせ系

Bandcampとユマニチュードが気になる介護職の雑記です。

ヴァンフォーレを退任した城福さんから考えさせられる、介護士としての姿勢。

介護保険の改定のおかげで、介護関連のニュースはどこもかしこもそれに関連したネガティブなニュースばかり。加えて介護施設での不祥事が取り上げられ、なおかつ認知症の高齢者の推計が2025年には730万人になるとのニュースも。

僕も僕で、ここのところネガティブな話題に触れてばかりの記事を書き続けていて、自分でこんな事が書きたいのか?と少し考えさせられていました。

ある程度、小さい小さい規模ではありますが言いたい事を訴えたい気持ちもあるので物言い的な記事はこれからも書きますが、そればかりもどうかと思うわけです。

 

そんなわけで、僕は昨日Twitterでもtweetしてましたが、少し前向きな記事を今日は書こうと思ってます。…なるのかな?

 

 

スポーツ雑誌の一つであるnumberのコラムに、昨年サッカーJ1ヴァンフォーレ甲府の監督を退任した城福さんのインタビューが掲載されていましたが、城福さんらしい熱の入った、しかし冷静に問題点や課題を語った内容になっていて非常に面白かったです。サッカーファンだけが読むのには非常に勿体ないと思うので取り上げようと思います。


初めて明かす甲府での3年間の秘話。城福浩が語るプロヴィンチャの苦悩。(1/7) [オフサイド・トリップ] - Number Web - ナンバー

 

ヴァンフォーレ甲府はプロヴィンチャ、いわゆる地方クラブの一つで、例えば浦和レッズのように膨大な予算を組んで選手補強をする、巨額の年俸を選手に支払うなどのマネーゲームに参加する事は出来ず、限られた予算の中でやりくりしながら毎シーズン闘うクラブです。結果を残した選手はビッグクラブに簡単に引き抜かれてしまうので毎年戦力が計算出来るわけではありません。また、目を付けた選手に声を掛けても簡単に移籍を承諾してもらえず、後から声を掛けてきたクラブに出し抜かれる事もあります。また、仮にも日本のトップリーグにいながら自前の練習場やクラブハウスをもたず、トップの選手でさえ他のアマチュアと同じ立場で練習場を転々としています。

そんな厳しい環境の中でもJ2からJ1昇格、そして残留と結果を残してきたのが城福さんなわけです。

 

 

このインタビューが面白かったのは、日本サッカー界、プロヴィンチャのクラブの課題について語っていながら、サッカーにとどまらないスケールの話をしているからです。そして今回取り上げるという事で、介護の業界にも置き換えられるんでは、と思っています。

 

 

まずこの部分から。

これは深読みかもしれませんが、甲府というクラブには組織としてやらなければならないことがあるにもかかわらず、組織の実力を超える結果が「出てしまった」という言葉としても解釈できます。

「否定はしません。もちろん、そこに選手の頑張りやクラブに関わる方々の並々ならぬ努力があったことは忘れてはいけませんが、現在、甲府ではビッグクラブなら5人でやるような仕事を2人で回している。スタッフの人数は、僕の基準からすればぎりぎりアウトですし、放浪の環境もアウトです。最低でも専用のクラブハウスや練習場は絶対に必要だし、課題は山積している。

 にもかかわらず、甲府市の人や県の人たちが2014年のヴァンフォーレを見て、『クラブハウスや専用の練習場がなくとも、やれるんじゃない?』と捉えるような雰囲気が生まれたのは事実です。クラブの環境を整備していくことを考えた場合に、全ての事柄を含めて自分は本当に役に立てたのだろうかと」

――最低限必要な施設さえないのに、目標を達成できてしまった。

 

この部分はまんま今の介護の状況に当てはまります。厳しい環境でも中にいる人が頑張って結果的に業務を廻している状況があるわけです。城福さんのように、目の前の結果だけでなく、業界の将来を考えて動けている人がどれだけいる事か。業界を食い物にして私腹を肥やしている一部の経営者なんかには特に見習って欲しい。

 

それからこの「目標を達成出来てしまった」という部分ですね。今の状況で出来てるじゃん、と見られる事の恐ろしさ。介護は法改正の流れの中で改めて問題点に目を向ける人が多いですが、でもちゃんとやるでしょ?と国がタカをくくっている感があります。頑張りや努力の頂点での結果を通常の業務の範囲と捉えられるのは悔しい事です。

 

 

次です。このインタビューで一番考えさせられたのはこのあたりです。

――5年、10年と、クラブが資金力を蓄えていっても難しいと?

「それだけでは難しいということです。実際、僕は3年間甲府にいましたが、この間、活動予算は減りました。J2からJ1に昇格してもJ1残留を果たしても予算は縮小しました。

 では、この状況をいかにして変えていくか

 クラブが存続の危機に立たされた時に、そこを乗り越えてきた歴史や、今日までクラブを支えてきてくださった地元財界や、チームをスポンサードしてくださっている方々の継続的な支援を仰ぎつつ、今後は更に新たなパートナーを獲得していくことも必要になるでしょう。いわば幅広く支援の輪を広げた、新生と共生という要素が必要不可欠だと思います

 むろんこれは簡単に答えがでる問題ではありませんが、甲府というクラブの未来が、非常に大きな岐路に差し掛かっているのは事実だと思います」

 

※赤字はこちらで着色

 

 

介護、あるいは福祉の世界は、その仕事の性格上存在自体が社会貢献な側面があります。だからこそ違う見方をすれば、他の業種に比べて社会に甘えやすいとも言えます。たまに見かけますが、例えば以前少し話題になった、介護施設が某伝統芸のプロにボランティアでの演舞をそれとなく訴える、とかですね。予算がかなり限られるのは理解出来ますが、慈善を相手に押し付けてしまうのは全くのお門違いです。甘えの典型的な例ですね。

 

 

共生なんですよ。社会から施しを受けるだけでなく、仕事としての介護以上に、これからは僕たちも何かを社会に還元出来る存在でなければいけません。いつまでも甘えていたら先はないですよね。

 

 

介護士って、多分社会では一番立場の弱い”士業”なんですよ。弱いんですが、何か事件が起きると、一般企業の人であれば「会社員の〜が」と業界を明かされず報道されますが、介護士は他の弁護士だとかと同じで「介護士の〜」と出ます。弱いけれど自分の行動が業界全体を背負う可能性があるんです。逆に言えば、何か良い事が出来れば個人単位の動きであっても全体に反映される可能性があるかもしれません。

 

 

今だったら、介護の人材不足を外国人労働者で補填しよう、なんて動きがあります。批判されまくりです。

でも、良いじゃないですか、日本の介護は凄い、と思ってもらえるくらいにしっかり指導出来れば、外国人労働者を単なる労働力として消化する事しか出来ない他の業界よりずっと社会でのステータスが上がるかもしれない。外国の人は、こちらの考え方次第で絶対戦力になりますよ。

 

外国人労働者を差別する介護業界 - 介護士こじらせ系

 

共生、です。いつまでも受け身の態勢だけでいるんじゃなくて、介護士という立場から何を社会に還元出来るか、くらいまで考えて業界がもっと動く必要があるんじゃないかな、と思うのです。

 

 

城福さんは、ヴァンフォーレ甲府が特別な場所であり続けなければならない、と言っています。僕たち介護の業界も、介護士として何か発信出来る存在にならなければならないのではないでしょうか。自省も込めて。