介護士こじらせ系

Bandcampとユマニチュードが気になる介護職の雑記です。

介護報酬引き下げと大声の利用者と悪天候と僕の暗い気分。

朝からポツリポツリと降っていた雨は帰りの送迎の時間になると勢いを増して降り続けた。季節柄日の落ちるのが早いこの時期ではあるが、真っ黒な雨雲は雨とともに暗い影を落としていて、この天気はそのまま僕の気分を表しているようだった。

 

暗い気分になった事の理由としては、一つにはとある利用者の発する声がいつにも増して大きくなっていたからだ。

 

その利用者は自分の意思表示が出来ない。いわば赤ん坊のようなもので、自分自身のタイミングで急に大きな声を上げる。それは長い時間座っている事によるお尻の痛みだったり、体の痒みだったりが原因のようで、赤ん坊と同じように無意味に声を上げるのではなくて、自分の体に異変が起きた時にそれを知らせる為である。そう言い切るのは、声を上げるたびにスタッフで体の状態を確認すると発疹やミミズ腫れのようなものが確認出来るからである。

僕たちは都度軟膏の塗布などで場当たり的に対処してはいるが、その裏にもっと根本的な原因があるだろうと考えている。家族も心配して医者に掛け合っているが、それ以上の診断が下される事はない。腫れた時に直接見せてくれ、とだけ言われるのだ。だが常に腫れているわけではなく、またそもそも通常の待合室に大声を上げ続ける利用者を連れて行く事は周りへの配慮を考えれば実質的には不可能でしかない。腫れている時の写真を撮るなどやれる事はやってみたが、結局のところ、直接見ている僕たちがその奥に何かしらの根本的な原因がある、と考えながらも、その原因すらまともに診てもらえる事もなく判断され、結局僕たちは場当たり的な処置で対応し続けるしかないのだ。

その医者はかつては粗暴性まで見せていたその利用者を診る事を拒否しているのではないか、と思わされるくらいに冷淡に処理しているように僕たちには映る。

 

そんなわけで、普段以上に大きな声を上げている利用者を目の前にしてもいつも通りの対応しか出来ず、大声が止まる事がない為、大の大人の全力の声である、その声の大きさにさすがに少しストレスを感じてしまうし、声が一旦止む時の利用者の顔が苦悶の表情を浮かべているのを見ると何も出来ない自分たちに虚しさを覚え、暗い気分になるのだ。

 

 

どんなに大声を上げても、自分の訴えかけが理解されないという事ほど悔しい事はないはずである。

 

 

暗い気分になったもう一つの理由は介護報酬の引き下げのニュースが原因であるが、なんだかこの利用者の状況と似ているな、と思った。

 

現場で苦しむ介護士たちがいくら口々に待遇の悪さを口にしたとしてもその声が聞き取られる事はおそらくない。

誰もが分かっている事だが、職員の給料1万円増額なんて、本当に職員に反映される事はない。というか、きっちり払うであろう事業者は現行の制度でもある程度加算などを給料に反映させているはずである。もっと言えば、1万円の増額が待遇の改善であると捉える介護士もいないだろう。

 

 

 

もちろん、金が金がとばかり言うつもりはない。

少なくとも僕にとって給料の少なさは肌の発疹やミミズ腫れのようなものだ。国という医者にはその根本的な原因を診て欲しいのだけれども、医者は1万円増額という軟膏しか処方してくれない。本人たちは否定するだろうが、もう少し本当の原因と向き合って欲しいように思う。色んな背景があるのはある程度分かっているつもりだけど、改めてクドクド言及はしない事にする。

 

 

 

 

天気予報は爆弾低気圧の襲来による悪天候が続く事と気温の冷え込みを予報していた。今回の介護保険制度の改定が爆弾低気圧でない事を祈るばかりだ。

 


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