介護士こじらせ系

Bandcampとユマニチュードが気になる介護職の雑記です。

介護施設の情報発信は難しい。

今では介護施設で開設しているところも珍しくはないwebサイトですが、まだまだ全ての施設が開設しているというわけではなく(少なくともうちの施設は未開設)、あるいは開設してからしっかり活用出来ているかと言えばそうとも言えないサイトがゴロゴロしているのも実情です。

介護施設の情報発信は難しい、と考えさせられたのはこれらの記事を読んだから、です。


《702》 情報も圧倒的に不足 - ひょっとして認知症? - アピタル(医療・健康)


《703》 施設に不満を感じたら - ひょっとして認知症? - アピタル(医療・健康)

 

同じ方の二日連続での記事です。

 

 

介護施設が発信したい、発信出来る情報と、通所、入所をしたいと考える介護家族の考え方には絶望的なまでに差があるように思えます。そこにあるギャップを埋めようとするのは不可能ではないか、とも思います。

 

この記事を元に、介護家族と介護施設の両者の見方を考えていこうと思います。

 

まず介護家族から。

 

 

二つの記事のうちの前者からの引用です。

シリーズ『認知症と長寿社会―笑顔のままで』においてご紹介しましたように、某高齢者施設でワン・フロア25人の重度のお年寄りを若い職員がたったひとりで見る夜勤シフトの様子や、虐待的な行為や言動が「ふつう」で「当たり前」で常識ぐらいに思っている特養の職員がいるといった話を聞けば誰しも不安になって、少しでも質の良い施設に親を入所させたいと願い、施設選びに際して迷うのはごくごく当然のことですよね。

 

こういった考え方が一つあります。おそらくは、時折発生してしまう介護施設での事件の影響が強く、ただでさえ選ぶ基準が分からない介護施設に対して大きな影を落としている事が原因だと考えられます。家族を思う心情を想像すれば当然の事だと思います。

これは、いわば「減点方式」の思考です。ある基準があったとして、そこから不安要素があれば施設の評価がマイナスされていく、という形ですね。上記のような例は大きな減点ですが、例えば施設が古いとか、職員が少ない、愛想が良くないなど、見る人によってその角度は様々になる事でしょう。

 

あるいはもう一つ。こちらも前者の記事、引用の引用になりますが、

希望は、職員数が手厚く、料理好きの母に少しでも包丁を持たせてくれるような所。

 

とあります。この辺は先ほどと逆で「加点方式」の考え方です。職員が多い事で目が行き届きやすいのではないか、多少危険も伴う包丁の扱いも見守ってくれる対応が可能である、というところですね。何かしらの基準を元に足し算的に評価していくパターンですね。

 

 

介護家族は介護される高齢者に合う、希望に添える(と予想される)など、利用家族の事を考えつつ、先に挙げたような不安要素が少しでもないような施設を探す、という形になります。

ここで問題なのはキーワードとして出てきた「基準」という言葉です。当然といえば当然ですが、初めて利用する介護サービスに対しての基準なんて、介護を仕事としていない限りはありません。引用から言えば、

「施設を探し始めて直面したのは圧倒的な情報不足だ。まず市の窓口で介護事業所マップをもらったが驚いた。『これだけ?』。そこに書かれていたのは名称と所在地、電話番号のみ。

 担当のケアマネジャーに相談しても、『施設には施設のケアマネがいるから、詳しくはわからない』との答え。地域包括支援センターにも出向いたが、窓口には数カ所のパンフレットしかなかった。おすすめを聞いたが、対応した職員は『特定の施設を薦めることはできない』と言った。

 『家族は自力でやみくもに施設を探すしかないのか』

 

 という事になります。

 

 

では介護施設側の見方を。

 

至極当然な話ですが、どんな施設だって自分たちの施設をよく見せたいに決まっています。虐待があった、暴行沙汰があったなどという事件性のあるものならともかくとして、人数が少ないだとか、あれは出来ない、これはやった事がない、などというネガティブな情報は出したくないし、知られたくないはず。

という事で、介護施設が発信出来る情報は加点に繋がるであろうポジティブな情報のみ、という事になります。その伝え方をあれこれと工夫しながら出しているわけです。

 

チラシなんかを配っている施設であれば、季節ごとの行事とそれを楽しむ利用者の様子が伝えられたり、例えば新しい設備についての説明や可能なサービスについての記述があったり。

webサイトを開設しているサイトであれば、そうした行事などをブログにしたり、設備写真をもっと詳細に掲載したり。

施設によっては、具体的なアセスメント事例なんかを掲載して、ストーリー立てて満足感に繋がるよう仕向けたり。この辺は見ていてテンプレ臭いので、webサイトを作る際にコンサルなんかも入って内容を練っているんではないでしょうか。

 

 

いずれにしても、介護家族にとって知りたい事の半分は介護施設が死んでも出せない内容になるわけで、家族からしたら漠然とした不安感は簡単に拭い去れないままサービスがスタートするような状況です。

かなり不幸な状況ですよね。利用者が満足を感じる時は発信した情報の通り、という当然に近い認識になりますし、何か不満を感じたり、ミスが発覚する場合には漠然とした不安が的中した、という状態になるわけですから。

 

 

第三者機関の客観的な評価を、という事で後者の記事で紹介されているのがこちら。


福祉サービス第三者評価情報

 

なのですが、記事では大阪が多かった、と書かれていますが実際調べるとあまり件数がないようで、僕のいる県は0、東京も0でした。調べ方が悪かったと思いたいところです。

 

 

なので今とりあえず必要なのは、今よりも明確な「基準」の提示なのではないでしょうか。僕思うんですが、介護に関わった事のない人で介護サービスの違いだとかそれぞれの内容を大まかにでも言える人って、そんなに多くないのではないでしょうか。例えば入院と特養への入所の違いを聞かれてはっきり答えられる人ってどれくらいいるんでしょう。

 

ネットで調べれば、という人もいるかもしれませんが、ネット自体に慣れていない人も突然介護サービスに関わる可能性はあるわけで、そうしたネットの即時性は100%有用であるとは言い切れません。

 

「基準」がある程度認知されていれば、そのプラスアルファの要素として「加点方式」が活きるはずです。施設もよりPRに特化出来ると思います。あるいは今ある情報発信であっても見え方が変わってくるのではないでしょうか。

 

 

介護家族と介護施設の情報についての考え方のギャップを埋めるのはかなり難しい事です。まずは中間点にあるであろう「基準」を作った上で、お互いのスタート地点に下駄を履かせる事がギャップを埋めるスタートになるのではないでしょうか。