介護士こじらせ系

Bandcampとユマニチュードが気になる介護職の雑記です。

衆院選と認知症の人の投票行動についてちょっと考えてみた。

衆院選が来週日曜日に迫ってきているものの、まだまだ誰に、どの党に投票するのか、あるいは最高裁判所裁判官はどうか、など全く決められていない僕です。ポリタス辺りを読み込むところから始めようと思ってます。

ポリタス 「総選挙」から考える日本の未来

 

 

選挙に伴って消費税増税が延期され、安倍内閣が争点を経済政策にもっていった事で僕たちのような福祉に関わっている人間の一番気にしている社会保障の分野が少し影が薄れてあまり良い気分がしませんが、その辺についてはここで語るのは止めておこうと思います。

そうではなく、今日は高齢者、認知症の方の選挙権について考えていこうと思います。

 

 

認知症 選挙」ってキーワードで検索すると結構記事が出てきます。皆さん気になるところは同じなようです。


認知症・痴呆症・ボケ老人に選挙用紙が何故届くの? 【OKWave】

しかし、要するには、こんな判断能力0人間に選挙権=1票を与えて、それで本当によいのか?ということを大いに疑問に感じ、危惧した上での訴えという訳です、今回も。

何で、何故、どうして、認知症=痴呆症=ボケ老人に、そもそも投票案内用紙が届き、認知症=痴呆症=ボケ老人が、一票を投じることができてしまうのですか?
これが疑問点で、質問したい点です。 

 随分な表現ですが、その分疑問に感じている事がスムーズに伝わりますね。おそらく、認知症の方に接する機会の少ない方からしたら、あるいは介護などの仕事に従事していない方からしたら大かれ少なかれ感じる疑問なのではないでしょうか?

 

実際こんな記事も。


認知症の祖母に参議院選挙の選挙権が復活してしまった!(成年後見制度)

わたしの祖母(89歳)はというと、『自分で候補者を選ぶ力もないし、判断力もない』 人です。つい先日も試しに祖母に聞いてみたところ、案の定『わたしは選挙はよく分からない』 と言ってました。 

 ご本人はもちろんの事、その成年後見人の方も悩んでいる、という内容ですね。

以下の記事には、医師の目線からのコメントが入っています。

認知症の方の選挙権: satosholog

そのまま引用してくると、

○ 「症状次第で投票は可能」 専門医
  「残念ながら、認知症がかなり進んで判断能力が全くなくなってしまった意思を投票に反映するのは難しい」。認知症の専門医で家族会の活動にもかかわっている杉山孝博川崎幸クリニック院長は語る。「けれど認知症の症状は本当にさまざま。認知症でも投票できる人はたくさんいることを知ってほしい」
  投票に必要な判断能力がある人でも、投票所という特殊な場に来たことで一時的に混乱することもあるという。
  認知症の高齢者など自分で十分に判断できない人の財産や権利を守るために作られた成年後見制度では、その人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3種類に区分される。最も重い「後見」になると、選挙権がない。けれどこれまで診断書や鑑定書を作成したことのある杉山医師は「財産管理の面から『後見』と区分された人でも、投票はできるのでは」と感じることもあるという。
  「一番怖いのは、認知症の人はすべて意思表示ができないという思いこみです」

 

とあります。特に最後、認知症の方はすべて意思表示ができないという思い込みの怖さに言及しているのが重要かなと思います。

 

意思を尊重する、という点から言及しているのが以下の記事です。

・選挙と認知症 - ほっと会_静岡県藤枝市にある認知症介護家族の会

例え無効票になろうとも投票したいという意思を尊重する、というのは本人のやりたい事に寄り添うという点で重要ですね。

 


いくつかの旅といくつかの話題と映画と本―その�D― 認知症あれこれ、そして/ウェブリブログ

こちらの記事がアメリカの事例から筆者の実体験まで、実に幅広い視点から認知症と選挙について言及しています。

後半、本論以降の記述が注目です。特に最後のこちら。

人権の一つとしての選挙権が適切に実行されるように認知症の人の残存能力に在った投票支援が行われるべきですが、具体的な支援として以下のことが考えられます。
認知症の人への情報―選挙の種類、選挙の期間、投票日、期日前投票の期間、立候補者や政党の政策など―を繰り返し提供すること、そして投票日当時の投票所への移動、投票所での投票方法の説明、家族または投票所の担当者による付添などの投票行動の支援が保障されておく必要があるでしょう。こうした試みをしても投票所へ行こうとしない、投票所で投票できないという事態も起こりえますが、積極的な棄権というより投票不能とせざるとえないでしょう。繰り返しますが、認知症であっても投票前の情報提供と投票所での本人の意思が投票行動に生かされる支援体制が重要と思われます。
もともと選挙で投票所に行くことがなかった認知症の人は投票行動として棄権または不可となるでしょうが、紹介したアメリカでの二重投票した女性のように、発病前から選挙活動に熱心で必ず投票していた認知症の人には支援体制のもと積極的な投票支援が試みられるべきでしょう。

かなり具体的な指摘がなされています。適切な情報提供と投票行動への支援が必要である、という事ですね。

 

 

ここで適切、という表現をしましたが、実際のところ凄く難しいと思うんですよね。

 

情報提供にしても、それぞれの党から公示されている公約を全て手渡し、更に小選挙区での立候補者の公約を示して、となるのが正解かと言えば難しいところですよね。実際、健常者である僕たちが読んでもうんざりしかねないわけですし。じゃあテレビや新聞を提示すれば良いのか、あるいはそれらを第三者が分かりやすく編集して示せば良いのか、と言えば、それも他人の意図が混じる分必ずしも適切だとは言い切れません。

 

投票行動への支援にしても、同行者が何かしら意図をもった支援を行ってしまえば恣意的な誘導が出来るわけで、確実に本人の判断だけで、というのはなかなか表現しにくいでしょう。

 

現状では、投票への意思表示が見られたら、テレビにしろ新聞にしろ、本人がよく目にするものから選挙についての情報源を示し、例え無効票になろうとも投票行動をした、という充足感を得てもらうような支援をする、というのが妥当なのかな、という気がします。僕の勉強不足だ、と言われれば、むしろその方が良いような…。

 

 

ちなみに、ほぼ全ての党が社会保障についても公約に盛り込んではあるわけですが、ネット上はともかくとして、高齢者、認知症の方、障がい者の方にどう伝えるかという視点はどの党も薄いような気がします。仮にも選挙権は全ての人に同様にあって、上記のような人々も当然選挙に参加する可能性はあるというのに、その人たちの為の公約が当人たちに伝わらなければ意味がないと思うんですけどね。

 

若い人の投票率を上げる事も重要ですが、投票に行けなくなった人へのアプローチも同じくらい重要なのでは?と感じます。政党がそういったアプローチを怠っているところを見ると、社会保障についてはどんなに素晴らしい公約があったとしても期待はあまりできないのかな、と少し悲観的になったりします。公約の提示のユニバーサルデザイン、どっかやんないかな。