介護士こじらせ系

Bandcampとユマニチュードが気になる介護職の雑記です。

「逆セクハラ」というセクハラ用語と介護現場における男性職員の受ける「セクハラ」について。

逆セクハラ」という、男性からしたら失礼極まりない言葉があります。セクハラは男性から女性に向かうもの、という固定概念があるからこそ生まれる言葉であって、この言葉自体が男性に対してセクハラになるという何とも恐ろしい言葉です。

 

一般的な企業においての「逆セクハラ」についてはこちらにある通りです。


逆セクハラ、急上昇|男にだってセクハラ被害はある。 | エンジャパンの【en】転職大辞典

当然の事ですが、セクハラと「逆セクハラ」に違いなんてありません。

女性からしてみたら、「そのくらいで逆セクハラだなんて言わないで」と思うかもしれませんね。はい、それがセクハラです。男女平等を謳う世の中になり、少しずつではありますが、女性の社会進出がなされるようになりました。本当の意味で男女平等の世の中にするためには、「男なんだから」「女なんだから」という発言がなくなることが必要ですね。

ー上記の記事から引用

 

介護の業界においても、「セクハラ」と聞くとどうしても男性の利用者や職員から女性職員に対するものを指す事が多いわけですが、当然その逆のパターンだってあるはずです。

 


エロババァ~ 介護職ですが職場に何人もエロババァ~がいます。二人で入... - Yahoo!知恵袋


同僚の女性からのセクハラについて|介護職・介護士・ヘルパーの悩み相談・質問掲示板|けあとも

 

以上二つは職員同士でのセクハラ問題です。これらについては、一般企業と同じように対処していくのが筋でしょう。

 

問題は以下のような、女性利用者から男性職員へ対象が向かう場合です。


認知症高齢者(女性)から職員(男)へのセクハラ高齢者の利用者からの... - Yahoo!知恵袋

 

前置きを少し。

 

セクハラが男性から女性に向かうものと認識されている背景には、男性=”強”、女性=”弱”という意識が根強いからだと考えられます。”強”と”弱”の根拠には、身体的特徴からくるもの、具体的には体の大きさや力の強さ、あるいは精神性として、長く男性が社会的地位において上役などを占めてきたという事が挙げられます。

特に後者については、男女雇用機会均等法以降少しずつではありますが改善へと向かっているように感じられます。”強”と”弱”の精神性における優劣は女性が上役に就く事でパワーバランスは完全に、とは言い切れないとは思いますが解消されます。

前者の身体性が厄介で、一般的に女性は男性に体の大きさや力では勝てません。だからこそ”強”と”弱”の優劣が入れ替わる事がかなり困難であり、この事がセクハラが男性から女性に向かうもの、という認識を固定し続ける要因になっているように感じます。

 

 

この辺で難しいのは、体に触る、体を見せる事が側から見てすぐ「セクハラ」であると判断出来るのに比べて、言葉によるの「セクハラ」は受け手が明確に拒否しないと周囲が「セクハラ」であると断定しにくいところにあります。

例えば同じように我慢していたとすると、触る、見せるは受ける当人でなくてもとりあえずあの行為は「セクハラ」だ、と周囲は認識出来ますが、言葉の場合は言われた言葉に対して当人がどう感じるか、が一つの判断基準になるからです。だから、仮にこの単語は「セクハラ」だろう、と誰もが思う言葉であっても、当人同士が何の問題もなくやりとり出来ていれば「セクハラ」にはならないわけです。(もっともこの事も問題で、実は嫌だった、とくれば一気に「セクハラ」問題になるわけで、言葉による「セクハラ」の扱いの難しさを表しているように思います。)

 

まとめると、

 

男性=体が強い、大きい、(かつて)社会的地位の上位=”強”

女性=体が弱い、小さい、(かつて)社会的地位の下位=”弱”

 

という極めて偏ったおかしな見方が女性から男性への「セクハラ」の存在自体を否定したり、あるいは「逆セクハラ」なる言葉の生まれる温床として存在しているように思われます。

 

本題に戻りましょう。

 

 

三つ目の事例として取り上げた、認知症の女性高齢者から男性職員への「セクハラ」問題。ここに潜んでいるのは、先に挙げた男女の”強”と”弱”のパワーバランスが如実に表れている事です。

 

 

身体的特徴として普通(という表現にします)の男性職員と、老齢により体の衰えた要介護女性、という構図。普通の精神状態である男性職員と認知症という病によって精神的に不安定な女性、という構図、です。

 

 

極めて”強”と”弱”のコントラストが強くなる場面で、更に介護というサービスを提供している、という関係性まで関わってきます。なので、先の事例のような場合はあっさりと訴えを握りつぶされるのがオチでしょう。

こうしたサービスの担い手、受け手の関係性が存在していても、男性利用者から女性職員に対しての「セクハラ」の場合は身体的特徴において高齢であってもまだ男性が優位に立つ事が多いので少しは問題として取り上げられる可能性があります。(もちろん、我慢せざるを得ないという方が大半でまだまだ解消出来る状態ではないと思いますが。)

 

 

今回記事にするにあたって検索をかけてみましたが、こうした女性利用者からの「セクハラ」に悩む男性職員の訴えの少ない事。それだけ、女性の受ける「セクハラ」問題以上に注目をされる事もなく、あるいは発言する事すら憚られる状態なのではないでしょうか。

 

 

介護職員の人材不足が声高に叫ばれています。当然、男性の介護職員のニーズもあるはずですし、男性だからこその視点での仕事の行い方もあります。その辺以前記事にしました。

 

介護職の現場における男性スタッフのあり方。 - 介護士こじらせ系

 

 給料ももちろんですが、身体介助というフィジカルな要素が関わってくる業界です、人と人が直接接する以上、他業種以上に「セクハラ」には敏感にならなければなりません。なので、女性が受ける「セクハラ」問題と同列に、あるいは「逆セクハラ」なんて偏った言葉が存在する以上、女性の問題以上に男性の受ける「セクハラ」問題に敏感に対処していかなければならないのではないでしょうか。

 

人材不足である以上、他業種に先んじた対策が必要なはずです。