介護士こじらせ系

Bandcampとユマニチュードが気になる介護職の雑記です。

利用者への対応は平等ではいけない、と感じた話。

こんばんは。今日はお休み頂いてたのでちょっとばかし外出していましたが、出先でもどことなく高齢者に目線がいってしまうのは職業病でしょうか。近所で高齢者を見かけると「うちの施設に来てくれー」と営業目線で見てしまうのは悲しい社畜精神なのかもしれません。

 

 

昼食は昨日雑誌で見て気になっていた定食屋へ。少し古風な、昔であれば街によくある、と言えた雰囲気のお店です。オールマイティに何でも揃う個人経営の定食屋というのはなかなか近所になくて、本当はフラッと気軽に入れるくらいがちょうど良いのにわざわざ探してまで行かなければならない場所になっているのはちょっと残念だなーと感じます。

 

 

1時半と昼食にしては少し遅い時間。お店の方もまかないを食べているような時間で、店には誰にもいませんでした。注文をしてからボケーッとテレビを見ていると初老の男性が。僕のすぐ前のテーブルに座ります。明らかに常連といった風情で、店員とも和気あいあいと話しながら注文を決めています。

続いて同じ年齢くらいの男性がその方と同じテーブルに着き、やはり店員と会話を交わしながら注文をします。

 

 

食べながら何となく観察していたんですが、常連ならではと思われる対応の手厚さにビックリしてしまいました。

 

 

お客さんの健康状態を把握しているのか、みそ汁をわざわざ薄めて出していたり(しかもこれくらいでしょ?と味の加減も把握していた)、ご飯の量を確認しながら調整していたり、おかずの量(その方はオムレツだった)をこれくらいか?と聞いていたり。払うお金は同じでもここまで違うか!と唸らされました。もちろん文句が言いたいわけではありません。

 

 

介護施設での利用者への対応はこうじゃなきゃいけない、と強く感じさせられました。平等じゃいけないな、と。

 

 

サービスの標準化という考え方はある程度どんな業種にも言える事で、誰にでも同じようにサービス提供が出来るようにマニュアルというものが存在しています。ある一定レベルまでのサービスを提供するためには必要でしょう。ただ、ある一定以上の段階にいくと今度はマニュアルがサービスの邪魔をし始めます。人としてやってあげたい、と思う事がマニュアルによって阻害される事があるわけです。これが意外とくせ者で、当たり前だろ、と思っていても出来ないという場合が出てきます。それはサービスとしてのマニュアルが規則と化してしまい、マニュアル外の行動を規則違反だと錯覚させるからです。

 

 

今日僕が見た光景は、そもそもお店自体にマニュアルなんてものはないでしょうし、単に常連で全部頭に入っている事が自然と出てきた、といったところでしょう。

 

 

翻って介護の話になれば、利用者の体調からもっている持病、食事の好き嫌いあるいはアレルギーや糖尿病による食べてはいけない成分など、細かく言えばキリがないほどの情報を介護士は共有し、頭に入れて利用者に接しているはずです。その上で更に利用者の日々の様子から観察される癖や得手不得手を情報として重ねて対応していきます。

でもこれらはあくまでサービスの標準化を実現させる為のプロセスでしかありません。

 

 

利用者一人一人を観察していると何かしら変化などを発見するでしょう。そして発見するたびに共有して標準化させていきます。そのプロセスを重ねていくうちに、きっとどうしても共有しようのない、つまりその人でしか提供出来ないサービスというものが見つかるはずです。それこそが介護士の個性であり、人を直接相手にする仕事の一つのやりがいであるし、利用者に継続して通いたい、と思わせる要因の一つになります。

 

この仕事はカルテをベースとして日々の生活の中から利用者一人一人のマニュアルをオーダーメイドで作り上げていくような仕事ですが、それはどこの施設にいたとしても同じ事。その上の満足感を得てもらう為に介護士の個性は必要なものだと思っています。

 

どんな仕事でも代わりの人間はいるとよく言われます。ですが、自分が砂で埋めていた穴が自分がいなくなる事で空いたとしても全く同じ砂で埋める人はいません。土やら水やら粘土だったりと埋め方には個性が出てくるものです。「この利用者は私にだけ話をしてくれる」というのはその人がいなくなったとしても誰かが何らかのやり方で埋めるものですが、全く同じように埋める事はないのですから。

自分にしか出来ない仕事はありませんが、自分なりの仕事の遂行の仕方があるはずです。人と接する介護はそれがしやすく、また必要な仕事だと思います。

 

どこまでも平等を突き詰めていって、その上で利用者それぞれに介護士が自らのアプローチで不平等な接し方をする事で、ワンランク上の満足感を得てもらえるのだと思います。そんな事を今日の定食屋で感じたのでした。

 

 

当たり前の事と言えばそうなんですけどね。