介助者も楽しくなる回想法はカルチャーから始めよう。
こんばんは。今日は以前いた施設にヘルプで一日働いていました。施設が変われば色々な神経の使いどころが変わってきます。結構平然と働いていて、案外久しぶりでも動けるものだなーと思っていたら帰宅後しばらくぐったり。不器用なもんです。
介護の中でのテクニックの一つに、回想法というものがあります。
このような記事も。
注目される回想法とは?介護のコツ 認知症フォーラム宮崎 認知症フォーラムドットコム
後者の記事から引用すれば、
認知症ケアのひとつである「回想法」を紹介。回想法は、昔使った道具などを題材にご本人に思い出話をしてもらい、記憶を掘り起こすリハビリ法。
というものです。まあ、ここまで説明しなくても皆さんご存知だと思います。うちの施設は小規模ということもあって集団で行うような事はありませんが、僕は個人的には会話の糸口としてかなりよく使います。様々な効果がある、というのは上記の記事からもある通りですが、それ以前に単純に、昔の生活やら風俗を聞くのがとても面白いからです。自分の生きていない時代の世界を目の当たりにしてきた人たちのお話です、興味がそそられてしょうがありません。
とまあ、僕個人はそんなわけで単純にそういった話が好きだから良いのですが、大抵は認知症の予防、だとか進行を防ぐ、というように仕事の中の一つ、という位置づけで行われる事の方が多いでしょう。ジェネレーションギャップがあるのは分かります。というかあまりにもそのギャップは大きいです。先に挙げたサイトなんかで回想法用の資料なんかがアップされているように、こういう形で揃えられていないと話として実行出来ないのが現状なのかもしれません。
これの何がいけないって、喋る利用者にとってみれば、相手が会話を楽しんでいないのが分かれば話す気力だって亡くなってしまうという事です。コミュニケーションとしては最悪です。そもそもこちらだって楽しめなければ回想法のもつ効果だって半減する、と思うのです。
仕事の為に、介護の為に、義務的にそうした過去の風俗を学ぶなんて面白くありません。せっかくなら趣味嗜好の範囲にそうした分野をどっぷり取り込んで、より介助者が楽しみながら回想法を行おうという事で、結局と言えばそうなりますが僕も自分が興味をそそられるものを挙げていこうと思います。
・「三丁目の夕日」
小学館コミック -ビッグスリーネット-[ビッグコミックオリジナル:三丁目の夕日]
※ただし漫画に限ります。
どうしても映画がヒットしたために、三丁目の夕日というと映画版ばかりが思い浮かんでしまいますが、回想法に転じて使える話題を得ようと思ったら断然漫画です。一話完結型でどこから読んでも問題ないですし、漫画に漂う雰囲気が当時(昭和30年代)の雰囲気をじんわりと伝えてきます。何より一番オススメな点は、当時の家電やら遊び道具やら家財道具やらを紹介してくれる描写の多さです。しっかりとコミュニケーションの取れる高齢者であれば、一緒に漫画を見ながら会話が出来そうです。
小学館コミック -ビッグスリーネット-[ビッグコミック:ためし読み]
小学館コミック -ビッグスリーネット-[ビッグコミック:ためし読み]
・小津安二郎作品
戦前戦後の映画から風俗を観る、というのは当時の様子がそのままフィルムに残されているからこそのリアリティから実に有用であると思います。ましてやそれが名画であればなおの事。その点小津安二郎作品は両者を確実に押さえているという意味で最高の題材です。風俗もそうですが、映画自体も回想法の一つの題材として取り上げられるのかもしれません。
小津安二郎 生誕110周年 現存する作品の数々を配信中 - GYAO!ストア
・「風立ちぬ」
上記二つより、少しは接しやすいかと思われるジブリ作品から、宮崎駿の引退作(?)となった風立ちぬを。
宮崎駿監督が時代考証やディテールにこだわることはよく知られている話ですが、特にこの作品は眉唾物です。関東大震災辺りからの時代背景をよく捉えている、と言われています。観た事のない方はもちろん、観た事のある方も、視点を変えてもう一度観てみると新しい発見があるかもしれません。
あえて言うのであれば、少ないとはいえ戦争が絡む映画です。高齢者によっては思い出したくない過去に当たる事は十分考えられるので注意すると良いでしょう。
回想法と介護職の勘違い・・・ 老人は童謡・軍歌が好き? - IT介護日記 「介護は快互 !!」 介護の世界は誤解だらけ!? 介護家族&介護職へのアドバイス
最後はYouTubeです。例えば、「昭和 映像」とかで検索かけるだけでもビックリするくらいに当時の映像が出てきます。
最初に挙げた三丁目の夕日が解説付きの漫画であるならこちらは実際の映像です。
Everyday life in bygone days in Tokyo, 1966 昭和東京 - YouTube
当時、ドイツのカメラマンが撮った映像だそうです。実に貴重な映像です。今だったら、ChromeCastなんかを使ってパソコンからテレビに映像を転送すれば、今までではありえなかった形で回想法が実現出来ます。というか、やるべきですよね。
いかがだったでしょうか。今回は、回想法を行う介助者にとっても興味がもてる、という視点から資料をチョイスしてみました。こうした資料から得た知識で利用者の過去の記憶を引き出す事が出来れば、かつての利用者の生活がよりリアルに浮き上がってきて一層利用者への理解が深まるのではないでしょうか。